両神山(埼玉県)で遭難 美しい紅葉時期は、同時に日暮れとの戦い

 

はじめに 両神山(埼玉県)で遭難したK.Sさんの記録 バスツアーの危険性

山々の紅葉が最も美しい時期の、2016年11月初旬、私はある旅行会社の日帰りバスツアーに申し込み、埼玉県の両神山登山に参加しました。

当日は高速道路の渋滞にあって登り始めが遅くなり、結果、日暮れ後の下山となり遭難しかけることになりました。

事前に旅行会社から伝えられていたコースの内容としては、「初級者向け」「山ガール中心のご参加者のため気軽」など、ビギナーの方も安心して参加できるという感じの募集要項でした。

そのため、私自身も大した下調べもせず、気軽に参加したのがまずは大きな間違いでした。

このツアーのために新調した軽登山靴とゴアテックスの雨具、念のためのヘッドライト程度の装備で、登山を開始したのです。

後から調べたら難コース。ツアーまかせの危険性

両神山には主に二つの登山コースがあり、今回のツアーでは日向大谷から会所を経て、両神神社、そして山頂まで登るという、後から調べたところ難しいほうのルートでした。約7時間、距離8キロ、高低差約1,000mとのことです。

上り始めはとても順調でした。添乗員さんやバスツアーの参加者も若い方が多く、歩きながら話が出来るほど、体力的にも絶好調というのが自分でも感じられたほどです。

しかし、日暮れの関係でもう引き返さざるを得ないと添乗員さんが判断した、9合目付近でのことです。右足のかかとの靴擦れがひどくなっているのがわかったのです。

上りに比べ下りはまだ登山靴とかかとの摩擦が少なく済んだため、自覚症状が出た後も何とか歩くことは出来ましたが、いつもの倍の時間がかかることとなりました。

今回の失敗の一番の原因は、新調した靴を履き慣らすことなく、ぶっつけ本番で試してみたことにあります。そんなペースで歩いていたためもちろん他の参加者から遅れをとり、結果、私は一人で山中、あまりの足の痛さに動けなくなってしまったのです。

両神山での遭難 その全容とは?

東京を早朝出発し渋滞にあい、結果、登り始めが午前10時。

この時点で、添乗員さん曰く、予定より1時間遅い登山開始のため、状況によっては途中で引き返す旨の説明がありました。

結果、途中までは早足で順調に歩いていましたが、山頂まであと1時間弱という「両神神社」付近で、下山時の日暮れの事も考え、引き返す決断をされました。

その合図とともに、さぁ、下山も頑張ろうと腰を上げた時でした。新調した登山靴で靴ずれを起こしていたようで、右のかかとの皮がめくれて出血していることに気付いたのです。

登るときに比べ下山時のスピードは格段に落ち、気が付いたら周りには誰もいないことが判明しました。

登山とは精神的要素に左右されるもので、一つ不安なことが起こると、これまでの良いペースが嘘のように、まったく動けなくなることも多々あるのです。

私はその場で倒れこんでしまい、もう一歩も動くことが出来ませんでした。寒さ、痛さで気絶していたようです。

気が付いたら救急車の中で、その日休みだった主人が私の手を握っていてくれていました。聞くと、私がバスに戻ってこないことに気付いた添乗員さんが警察に連絡をしてくれていました。

そしてバスまであと数百メートルというところで倒れている私を発見したようなのです。発見された当時は軽い低体温症で、発見が遅かったら大事になっていかもしれないと、主人から伝えられました。

両神山での遭難 その反省点

まず何よりも、私自身、山を甘く見ていたことが大きな反省点です。バスツアーなので安全だと思い込みし、自分で山の下調べも何もしなかったのは問題だと実感しました。

少なくとも既述の装備に関しては、例えばもう少し身近なハイキング程度でまずは慣らしてみるなど、より万全の準備が望まれると思います。

集団で登ろうが個人で登ろうが、登頂して無事に帰ってくるのは登山者の自己責任です。他の方に迷惑をかけないためにも、「その山の下調べ」と「使い慣れた装備の準備」は何よりも重要だと改めて感じた、初めてのバスツアー体験でした。

体験者 東京都 K.S

編集者補記

ツアーを組むなら、せめて最後尾にも人員を配置するのが常識ではないかと思います。そして、先頭と最後尾には、連絡網も必要です。このような安易なツアーは、単独より危険です。最近、大きな死亡事故などを誘発しているのも、この安易さに原因があるのではないでしょうか?